「初めての遭難」―山岳部時代の想い出―
「気をつけてね!」
母の縋るような目を尻目に、
勇躍として初めての夏山合宿に家を出たのは21歳のある日のことでした。
金沢駅で朝6時に集合となっていたのに、
なにせ50kgのザックですから、バスにも乗れない
(ああーなんと。
ザックを担いだままではバスの入り口のたった3段の階段が昇れないのです。
その上、朝早くてバスも無い)。
タクシーなどは学生の分際でもってのほか。
車の免許は無いし、車も無い。
となれば、やはり歩くしかないわけです。なんといっても山岳部なのですから。
しかしです。
ようやく入学を許される前、
二年ばかりも浪人している間は、
運動を全くしていませんでしたから、
体力がすっかり衰えています。
少し歩いただけでザックが肩にずっしり。
金沢駅への地下道に辿り着いたときには既に疲労困憊。
それでも、下り階段ですからシメシメ。
とその時にツルッと滑ってダダダーっと
階段を転げ落ちたと思ったら、
足首にグニャッと嫌な音。
もう立てません。
通りがかりのお婆ちゃんが声をかけてくれます。
「医学部の学生さん!大丈夫け?」
えっ。なんで医学部の学生だと分かるの?
ふと見ると、ザックには―金沢大学医学部山岳部―と筆痕も鮮やかに。
ああー!情けない!!
入部した途端、金沢駅で早や遭難とは!!!
さて、その学生さんがその後どうなったかですって?
残念ながら字数が尽きました。
次回をお楽しみに。