薬価制度
(1997年9月25日)
―参照価格制導入時の議論を振り返って―


きたるべき21世紀を迎え、
医療保険制度の抜本的な制度改革が必要であることはいうまでもない。
与党医療保険制度改革協議会に対し、
厚生省、日本医師会、日本製薬団体連合会(日薬連)、連合、日経連は各々、
独自の改革案を改革案を提出した。

改革案は診療報酬、老人保険など多岐にわたるが、
そのなかでも薬価についての議論が交錯している。
厚生省は「参照価格制」を提示したが、
この制度は薬を成分・効能別に分類して、保険適応の上限額を設定し、
それを上回る薬を処方した場合は、超過分は患者負担とするものだ。
これに対し日薬連はメーカーや卸は薬の販売価格を自由に設定し、
医療機関が実際に購入した価格を保険給付する
「自由価格・購入価給付制」を主張している。

厚生省案は同制度をすでに実施している諸外国の例でもみられるように、
薬剤費の抑制効果については限界がある。
厚生省のねらいはひたすら保険給付の抑制にあり、薬剤の販売価格は野放しとなる。
このため患者負担は重くなるいっぽうだ。
日薬連案では薬価を市場経済にゆだねるとしながらも、
実際には薬の販売価格はメーカーの言い値で決まることになり、
薬価が高値安定となるのは必至だ。


薬価についてのいちばん大きな問題は、
日本の薬剤価格が諸外国と比較して異様に高いことにある。
しかもこの価格が厚生省と薬剤メーカーとの間で、公開されずに決定されている。
いまなすべきことは、薬の審査基準を国際的に認められる水準にし、
薬価の設定についてはその経過をすべて公開とすることである。


政府・厚生省の操作により、
「薬漬け医療」と薬価差益の不当収益があたかも事実であるかのごとき
マスコミの論調だ。
消費税の償還、薬剤保管消耗コスト、技術料の適正な評価がなされるなら、
現行のR幅などは不要である。
薬価制度の改革は、なによりも患者さんのためにという視点で考えることが大切だ。


(日本医師会の主張する「医薬品現物給付制」などを含め多くの議論を巻き起こした日本型参照価格制度は
この後、1999年4月13日、自民党によって正式にその導入が闇に葬られた。
この論考はさきに記したように1997年9月25日の時点で書かれたものであることを付記する)

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