あじさい―紫陽花―
雨宝院の紫陽花(あじさい)が青紫の花を咲かすと、からだの芯まで澱んだ重い雨が続いていても、夏の陽光もそうは遠くないなとほっこりした気持ちになる。
「紫陽花の八重咲く如く弥つ代にをいませわが背子見つつ偲ばむ」(橘諸兄)。
学名をヒドランゲラ・マクロフィラと呼ぶが、これは18世紀末に出島に滞日したスウェーデンの博物学者ツンベルクが命名したもの。後に来日したシーボルト(フィリップ・フランツ・フォン・シーボルト)はこの花を愛し、日本人妻、楠本滝(オタキサン)の名前からヒドランゲラ・オタクサと名づけ「日本植物誌」に発表した。滝と娘イネにまつわる話は日本開国の歴史とともに多くの史家にも語り継がれている。彼の開いた鳴滝塾跡では記念館が建てられ、今でも紫陽花の群落が見られ美しい。
紫陽花の花言葉は「移り気」とされるが、これは花の色が変化することからつけられたもの。テレビのドラエモンでも紫陽花のかたちをしたブローチがでてきて、こころがわりブローチといっていた。
同じ紫陽花の花言葉でも西洋では「辛抱強い愛情」となるらしい。梅雨の長雨をじっと耐え忍ぶからか。
経済財政諮問会議が指針のなかで老人医療費の総枠規制を謳ったが、医療の質を向上させ健康を守るという理念と視点に欠けている。小泉首相の掲げる聖域なき改革を高く評価するだけに、強く惜しむものである。医療制度抜本改革のなかで国民の医療を守る立場をいかにしっかり貫き通せるか、我々医療側の対応が問われている。
こればかりは紫陽花の花言葉も西洋風であって欲しい。辛抱強くと。