脳にさぼり癖つけないで
―ほったらかしは禁物―
耳の聞こえが悪くても、どうせ一日中、
家にいるのだから構わない。
補聴器を使っても昔のように聞こえるわけではないし、
面倒だから使わない。
こんなふうに考えているとしたら、きょう今すぐに、
考え直して聞こえを補う工夫をしましょう。
なぜなら、私たちの脳の中で聞こえを担当している部分は、
使わずに放っておけば、
よく使っている場合に比べて加速度がついて衰えていくからです。
音は空気の振動です。それが鼓膜を動かし、中耳にある骨をふるわせます。
ここまでは老化の影響はあまりありません。
この後が問題です。
骨の振動は内耳に伝わりイソギンチャクのような姿の細胞で
電気的な興奮に置き換えられ、神経を通して聴力を担当する脳に伝えられます。
この細胞や神経が年とともに減るため聞こえが悪くなるのです。
この細胞や神経を増やすことはできません。
減少を予防することもできません。
ですから、どんなにいい補聴器をつけても、
若いときと同じように聞こえるというわけにはいきません。
しかし、聞こえを担当する細胞が減るということは、
脳に対する刺激も減るということです。
脳は刺激を受けなくなると、さぼります。
次第にさぼり癖がついて、
いよいよ肝腎なときに音の刺激が来ても機能しなくなります。
脳にさぼり癖をつけないことが大切なのです
自分の耳と付き合うのは自分自身なのですから。
北國新聞 平成12年1月10日号から改変