補聴器の得手不得手
―駅などの雑踏は苦手―



子どもの頃、
補聴器「学校に行ったら先生の顔を見て授業を受けなさい」
と言われたことはありませんか。

不思議なもので、じっと見つめているうちに、
同級生のひそひそ話よりも、
先生の声がはっきりと聞こえるようになります。
ところが、よそ見をしていると、
先生の声はどこかに消え、
はるか遠くの運動場の友達の声のほうが
よく聞こえるようになってしまいます。
私たちは無意識のうちに、
自分が聞きたい音だけを大きくして聞いているのです。

しかし、この大切な働きが補聴器には残念ながら無いのです。
補聴器は、どんな音も同じように大きくしますから、
小さなつぶやきを聞き取れるように調節しておくと、
大声で呼ばれたときなどは、びっくりするほどになってしまいます。
ですから、補聴器を使いこなすための最大のポイントは、
目的によって使い分けることと。
使う人の周りの人の心の持ちようであり、接し方なのです。

一般の補聴器が得意とするのは、
居間で家族と話すときなど、小人数の会話です。
補聴器を使っている人と話すときは戸を閉めて、
テレビを消して、機械的に耳に飛び込んでくる余分の音を無くし、
相手の正面に回って顔を見せて、
ゆっくりと話すことが大切です。

「性能がいい補聴器を買ったから、
これでおじいちゃんもよく聞こえるだろう」
こんなふうに考えるのは大きな間違いです。
いかによく聞いてもらうか、
周りが努力をしない限り、
どんなにいい補聴器でも宝の持ち腐れなのです


北國新聞 平成12年2月7日号から一部改変

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