「郡上八幡幻想」
―フランツ・カフカを偲びつつ―
「お城から降りてこられたら、大きな通りに出ます。ここは右に曲がってくださいな。
今いらっしゃる博覧館が見えたら、今度はきっと左ですよ。
まっすぐ歩いて丁度ぴったし50メートル。その辺りからが職人町ですな」
15分も前から延々と町巡りの説明が続いている。
最初はお城からご覧になるといいですよ。
と言っていたのに、八幡城の閉館までもう20分しかない。
「江戸のころからの街なのですがな。
大正に大火にあってから袖壁と紅殼格子で。そりゃあ、品がありますな」
「ずっと行って、右に首をちょっと捻ると」
爺さんも自分がそこで宗祇水を見つけようとするかのように首を捻っている。
「すると、宗祇水がありますじゃ」
「あのー」
「はて!」
「そろそろ、城に急がないと。時間が」
「それより、お客さん方は、
郡上の踊りは知んなすっておいでるか?
いいパンフレットがありますぞ」
右端の書類棚を一頻り捜して、
謄写版刷りの郡上踊りの説明書きを三部ばかり押し付ける。
「ちょっと先まで毎晩のように踊りがありましたがな。
お盆も過ぎて、今は見れませんなあ。
春駒も好いが、わしはかわさきですな。お客さんはどれが宜しいか」
「あのー。ほんとに僕等は急ぎますので。ご親切にありがとうございました」
これ以上、爺さんの話に付き合うわけにもいかない。
きっぱりそう言って館を出た時はもう夕暮れ。
城は明日に取っておくことにして、
それでも爺さんの謂うとおり鍛冶屋町から本町付近に向かうことにした二人だったが、、、、、
この後、「大黒屋」で溜醤油の講釈を婆ちゃんから拝聴。
落鮎を食いにいった「大八」で店の末っ子、
八幡小学校2年生の陽子ちゃんに写し絵を描いてもらう
「母情」「宗祇水」「積翠」と飲みすすみ、混沌のうちに夜は更けていく。
城にはいつ辿り着けるのか!
「アイさんと郡上八幡にいってました。
町の人はいい人ばかり。
博覧館のおじいちゃん。ありがとうございました。
郷土料理屋の陽子ちゃん。
輪投げ大会はどうでしたか? なにかもらえたかなー?
写し絵とても上手でしたね。
こんどは、踊りのときにいって「春駒」踊ろうっと」
(小森耳鼻咽喉科医院ホームページBBS。
10月15日のカキコ。
たっちゃんパパより)